DATE : 2008/01/05 (Sat)
「ヒューメイン・インタフェース」(ジェフ・ラスキン:著、村上 雅章:訳、ピアソン・エデュケーション、2001)を読みました。人に優しいインタフェースについて、マッキントッシュのプロジェクトを立ち上げた人物が書いた本です。
本書では、マッキントッシュやCanon Catなど、ジェフ・ラスキン本人の手がけた製品のユーザインタフェースを中心に解説しています。中でも、モードをなくすことやアイコン多用の厳禁、GUI への批判などが繰り返し出てきます。
Canon Cat は海外のみで発売されたものらしく、私も本書を読むまでは存在すら知りませんでした。が、電源を落とす前に現在の画面を画像として保存しておいて、次回の電源投入時には立ち上げが完了するまでその画像を表示しておくなど、非常に面白いハードだと思いました。本書によると、状況に応じて人が頭を切り替えるのには約10秒かかるそうです。そのため、次回の電源投入時に終了直前の画面を表示しておくと、立ち上がり完了とともに人が作業を再開できるようになると言います。
その一方で、Canon Cat は、思わず顔をしかめてしまいそうなほど「直感」とはほど遠いインタフェースとなっています。Canon Cat にはマウスはなく、ディスクのフォーマットからメールの送信まで全てキーボード操作で行います。また、GUI はなく、全てテキスト上で完結するインタフェースとなっています。
これだけ見ると、どこが人に優しいのか疑問になってきます。ところが、著者はこれこそが人に優しいインタフェースなのだと主張しています。まず、よくユーザインタフェースの評価で言われる「直感的」というのはしょせん「これまでに見たことがある」ものに過ぎず、ユーザの国籍やこれまでの経験などによって解釈が変わりうるそうです。そして、これまでに見たことがある = 人に優しいとは限らず、本当に人に優しいのは、教育のしやすいインタフェースであり、ユーザの作業の邪魔をしないインタフェースであると述べています(実際にはさらにいろいろと述べていますが、省きました)。
しかし、これはなかなか難しい問題といえます。例えば、見ただけで嫌になりそうなインタフェースの製品を買いたいかというと、正直いって私は買いたくありません。かといって、見た目が良さそうなので買ってみたら、思うように操作できずイライラする……ということも珍しくありません。
結局のところ、その製品でなにを重視するかが問題となってくるのだと思います。例えば、長期間、頻繁に使われるような製品であれば、ユーザが快適に作業できるインタフェースが必要となりますが、時々しか使われない製品であれば、目で見て使い方が分からないと不便です。また、既存の製品に対抗する場合には、その製品のインタフェースに似せて、ユーザが移行しやすいようにする必要もあります。Canon Cat の場合は、ユーザの快適さに重視を置いたため、一見するとややこしいインタフェースになっているのでしょう。
(;^ω^)私の身近な例では、vi エディタが該当するかと思います。キーボード操作だけでテキストの編集ができる反面、とっつきはかなり悪いものとなっています。全ての操作はとても覚えきれません。ただ、一部の操作だけでもじゅうぶん快適に使えますし、なによりキーボードから手を離さなくてもいいという点は魅力です。もっとも、人に強くおすすめできるかというと、とっつきが悪い以上なかなか難しいと思います。